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肉を加熱するとたんぱく質は変わる?

肉を加熱しても、たんぱく質は壊れません。 変わるのは水分です。ステーキは焼くと水分が抜けるので、同じたんぱく質がより軽い塊に収まり、焼いた後の100gあたりの数字は生より大きくなります。一切れ全体のたんぱく質の量は、ほとんど動きません。
肉を加熱するとたんぱく質は壊れるの?
壊れません。熱でたんぱく質の立体構造がほどける(変性する)だけで、アミノ酸のつながりが切れて肉から消えるわけではありません。たんぱく質はステーキの中に残ります。
熱で失われるのは水分です。国際誌 International Journal of Environmental Research and Public Health の2022年の研究(Borela et al., PMC8744971)によると、生の牛ヒレステーキの水分は100gあたり72.13gです。この水分が抜けるとステーキは縮み、もともとあったたんぱく質が、小さくなった塊の中でより大きな割合を占めます。
加熱後の肉の表示が、同じ部位の生の表示より立派に見えるのはこのためです。何かが加わったのではなく、水分が減って残りが濃くなっただけです。
加熱した牛肉は、生より100gあたりのたんぱく質が多いのはなぜ?
100gあたりのたんぱく質は「濃度」であり、合計ではありません。分母が小さくなれば、分子が変わらなくても数字は上がります。
同じ研究では、生の牛ヒレステーキのたんぱく質は100gあたり22.90g(±0.42)でした。油を使ってフライパンでウェルダンに焼くと、34.19g(±0.90)に上がっています。これはこの研究が直接測った値で、すべての牛肉に共通する定数ではありません。
約11gのたんぱく質がどこかから現れたわけではありません。同じたんぱく質を、水分が減って軽くなった肉に対して測り直しただけです。焼いたステーキは生のときより軽くなっていますが、元のたんぱく質のほぼ全部を保っています。
仕組みがわかれば、2つの数字は矛盾して見えなくなります。同じ一切れを、2つの異なる分母で表しているだけです。
調理法によって、牛肉の重さはどれくらい減る?
減る水分の量は、加熱するかどうかだけでなく調理法によって変わります。Borela et al.は、牛ヒレステーキを3通りの方法でウェルダンに焼き、調理後の重さを生の重さで割った「調理係数」を調べました。
油を使ったフライパン焼きは、生の重さの0.60まで減り、3つの方法で最も大きく減りました。油なしのフライパン焼きは0.72、エアフライヤーは0.71で、油なしのフライパンに近い結果です。
| 調理法(ウェルダン) | 調理係数(調理後の重さ ÷ 生の重さ) | 調理後100gあたりのたんぱく質 |
|---|---|---|
| 油を使ってフライパンで焼く | 0.60 | 34.19 g |
| 油なしでフライパンで焼く | 0.72 | 28.19 g |
| エアフライヤー | 0.71 | 29.67 g |
出典:Borela et al. 2022, PMC8744971。
最も重さが減った油フライパン焼きが、100gあたりのたんぱく質も最も高く出ました。これは水分が抜けた結果であり、油がたんぱく質を足したわけでも、特定の調理法が栄養を「濃縮」して得をするわけでもありません。
自宅で焼いたステーキを記録するとき、同じ肉でも調理法で表示の読み方が変わる理由が、これでわかります。
計算例:1枚のステーキを焼くと、たんぱく質はどう動く?
この例の出発点の重さ200gは、説明のための仮の数字です。 研究が報告しているのは濃度と比率で、決まった1人前の重さではないためです。たんぱく質と調理係数は、Borela et al.の実測値を使っています。
生のヒレステーキ200gから始めます。100gあたり22.90gなので、加熱前のたんぱく質は 200 ÷ 100 × 22.90 = 45.8g です。
油を使ってウェルダンに焼くと、調理係数0.60より、重さは 200 × 0.60 = 120g になります。100gあたり34.19gなので、この120gのたんぱく質は 120 ÷ 100 × 34.19 = 41.0g です。
| 段階 | 重さ | 100gあたりのたんぱく質 | たんぱく質の合計 |
|---|---|---|---|
| 生 | 200 g | 22.90 g | 45.8 g |
| 加熱後(油フライパン焼き) | 120 g | 34.19 g | 41.0 g |
100gあたりの数字は、約5割近く(34.19 ÷ 22.90 ≒ 1.49)増えました。一切れの合計は約5g減っていますが、たんぱく質が壊れたからではありません。大きな水分の減少に小さな損失が重なることと、22.90と34.19がそれぞれ独立に測った平均値で、それぞれ誤差を持つことが理由です。完全に保存される1本の曲線上の2点ではありません。
レシピ全体のカロリーがわかっていて、焼き上がった料理を何人分かに分けたいときは、無料のレシピ1人分カロリー計算ツールが、仕上がりの重さをもとにその計算をします。
結論は変わりません。ステーキは焼いてもたんぱく質が増えたわけではなく、元の大半を失ったわけでもありません。重さの数字が動いたので、表示の数字が動いたのです。
記録するのは、生と調理後のどちらの数字?
量った状態に合う数字を使います。焼いた後に量ったなら調理後の肉の値を、焼く前に生で量ったなら生の値を使います。
ここでの記録ミスの原因は、調理そのものではなく、2つを混ぜることです。調理後の120gに、生の肉の100gあたりのたんぱく質を掛けると、その皿のたんぱく質は多く見積もられます。生の値は、実際より水分が多く残っている前提の数字だからです。
日本食品標準成分表(八訂)でも、同じ食材の生と焼いた後は別々の項目として載っています。ですから、量った状態と同じ項目を選ぶのが基本です。記録するタイミングで量り、その同じ状態のたんぱく質を調べるか見積もってください。
調理法で、実際に食べるたんぱく質の量は変わる?
計画に影響するほどは変わりません。肉のたんぱく質の総量は生の部位で決まっていて、どの調理法でも、その数字に近いまま残ります。
調理法が変えるのは、抜ける水分の量です。それによって皿にのる肉の重さが変わり、調理後の重さで記録するときの100gあたりの数字も変わります。この研究の油フライパン焼きのように水分がより抜けると、小さく、数字の上で濃い肉になりますが、食べる量として意味のある差でたんぱく質が増えるわけではありません。
たんぱく質の数字を目当てに調理法を選ぶのは、表示上の見かけを追うことで、実際の得にはなりません。
間違えやすい点は?
- 生と調理後のたんぱく質の数字を平均しないでください。 同じ肉を2つの異なる重さで表した数字です。平均しても、どちらにも当てはまらない数字になります。
- すべての部位と調理法で水分の減り方が同じとは限りません。 Borela et al.は、ヒレステーキのウェルダンという1つの部位で、3つの方法の調理係数が0.60から0.72だったと測っています。部位や焼き加減が変われば、比率も変わります。
- 牛肉の調理係数を他の肉に当てはめないでください。 鶏肉は加熱による重さの変わり方が違います。鶏肉は加熱するとたんぱく質が減る?で、同じ仕組みを鶏肉の出典つきの数字で確かめられます。
- 「ウェルダン」だけが調理の終点だと考えないでください。 米国農務省(USDA)の食品安全の指針では、ステーキなど牛の塊肉の安全な最低温度は145°F(62.8°C)で3分休ませる、とされています。ウェルダンを指しているわけではないので、焼き加減が浅いステーキは水分の減りも小さく、数字の読み方も変わります。
- ひき肉の安全温度と、塊のステーキを混同しないでください。 USDAはひき肉を160°F(71.1°C)としており、塊肉とは別の基準です。ひき肉にすると水分の抜け方も変わります。
Avocaloはどこで役立つ?
Avocaloは、写真で食事のカロリーと栄養素を記録するアプリです。食事を撮ると、AIの画像モデルが写真から、カロリー、たんぱく質、炭水化物、脂質を推定します。保存する前に、内容を確認して修正できます。
この推定は、皿にのった焼き上がりのステーキそのものを読み取ります。思い出したり計算し直したりする生の重さは要りません。ただし、栄養データベースで食品を引いたり、重さを量ったりはせず、隠れた油やソースもわかりません。検査値ではなく、確かめるための目安として使ってください。
生から調理後への計算を毎回手でしたくないときは、Avocaloをダウンロードして、仕上がった料理を撮る方法もあります。
よくある質問
ヒレ以外の牛肉の部位でも同じですか?
水分が抜けてたんぱく質が濃くなる仕組みは広く当てはまりますが、数字はそのまま移せません。Borela et al.が測ったのはヒレステーキだけです。肩ロースのように結合組織や脂が多い部位は、水分の抜け方が違うため、ヒレの数字を借りず、その部位の測定値を見る必要があります。
高温で焼くと、たんぱく質は燃えてなくなりますか?
なくなりません。高温でたんぱく質は変性し、形や食感が変わりますが、アミノ酸が肉から取り除かれるわけではありません。焼き色(メイラード反応)が変えるのは表面の風味成分で、中のたんぱく質の量ではありません。
同じ部位なのに、栄養成分表示のたんぱく質が違うのはなぜですか?
多くは、肉の状態が違うためです。一方が生、もう一方が調理後、あるいは水分の抜け方が違う別の調理法の数字だからです。比べる前に、それぞれの表示が生の重さか調理後の重さかを確かめてください。
焼いた後に休ませると、重さやたんぱく質の数字は変わりますか?
休ませると肉の中で肉汁が行き渡ることはありますが、この記事の数字は、Borela et al.が決めた調理の終点で測った値です。休ませた後の重さやたんぱく質を別に報告しているわけではないので、この研究からは変化を示せません。
出典
- Borela et al., 'Influence of Different Cooking Methods on Fillet Steak Physicochemical Characteristics,' Int. J. Environ. Res. Public Health 19(1), 2022:この記事全体で使った、生と調理後のたんぱく質、水分、調理係数の数字。
- USDA FSIS Safe Minimum Internal Temperature Chart:牛の塊肉とひき肉の安全な調理温度(米国の基準で、間違えやすい点の項で引用)。日本の公的な栄養・食品衛生の案内は、厚生労働省で確認できます。
- Avocaloの編集方針:調べ方、出典の基準、実測値と説明用の数字の区別を説明しています。
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